炊き出しの段取り|何食作るか、米の量の目安、役割分担、保健所への連絡

避難所や地域の行事で、何十人・何百人分の温かい食事を作る炊き出し。内閣府の避難所運営のガイドラインは、温かい食事の提供や栄養管理も考える必要があるとしたうえで、一般的に災害時の炊き出しは食品衛生法の営業許可の対象外であり、地域やボランティアによる炊き出しの具体的な方法を事前に準備しておくことが重要だとしています。チェックリストには「炊き出し訓練を実施する」という項目もあります。

この記事では、炊き出しの段取り(何食作るか、米の量、役割、事前の連絡)を中心にまとめます。食中毒予防の基本(つけない・増やさない・やっつける)は「野外の調理と炊き出しの食中毒予防」をご覧ください。

最初に決める 3 つ

東京都国立市の「災害時 炊き出しマニュアル」は、準備の最初に、①何食提供するのか、②提供場所はどこか、③提供時間はいつか、を決めるとしています。この 3 つが決まると、米や水の量、人の数、器具が決まります。

事前に保健所へ連絡する

内閣府と厚生労働省は、令和 6 年 11 月の事務連絡で、炊き出しの活用は有効な手段の一つになるとして、自治体の例を示しています。その一つの熊本県の例では、活動場所が決まったら、事前に被災地を管轄する保健所へ連絡して衛生面の注意点の説明を受けること、炊き出しをする人は「炊き出しチェック表」を作って保健所に出すこと、避難所などで炊き出しをするときは調理を始める前に避難所などの管理者にも出すことを求めています。チェック表には、次のような項目があります。

  • 団体名・責任者・提供日時・提供メニュー・調理や配膳をする人の数
  • 提供する食品は、すべて加熱調理品か
  • 直接食品にふれる調理のときは、使い捨て手袋を使っているか

地域によって手続きは違います。炊き出しをする自治体の保健所に確かめてください。

米の量を見積もる

自治体の資料に、量の目安になる数字があります。

資料数字
岡山県の災害時の献立集菜めしご飯は、1 人分が米 75 g(1/2 合)、50 人分が 3.75 kg(2 升 5 合)、100 人分が 7.5 kg(5 升)
国立市の炊き出しマニュアル移動式の回転釜で最大 20 kg を炊ける。炊きあがりのご飯は約 44 kg(米の 2.2 倍を想定)で、100 g のおにぎり約 440 個程度。米 20 kg に対して、湯は約 26 L(1.3 倍)、塩は 120 g
喜多方市赤十字奉仕団(日本赤十字社 福島県支部のサイトに掲載)の炊飯袋のご飯米 1 合と水 180 cc を袋に入れ、空気を抜いて固く結び、沸騰した湯で 30 分煮て、10 分ほど蒸らす。無洗米なら水を 2〜3 割多めに

この 2 つの数字(1 人 75 g・炊きあがり 2.2 倍)で人数ごとに計算すると、次のようになります(このサイトの計算。おにぎりは 1 個 100 g として)。

人数米炊きあがり100 g のおにぎりにすると
30 人2.25 kg約 5 kg約 49 個
50 人3.75 kg約 8.3 kg約 82 個
100 人7.5 kg約 16.5 kg約 165 個
200 人15 kg約 33 kg約 330 個

汁物やおかずを付けるか、子どもや高齢の方がどれくらいいるかで、必要な量は変わります。最初の回は少し多めに見積もり、実際に食べた量を記録して次に生かします(このサイトからの提案)。

栄養とアレルギー

厚生労働省は東日本大震災のとき、避難所の食事の計画と評価の目安として、1 歳以上の 1 人 1 日あたりエネルギー 2,000 kcal、たんぱく質 55 g などの参照量を示しました(被災後約 3 か月までの目安で、一人ひとりの栄養管理に使うものではないとしています)。約 3 か月以降の目安としては、エネルギー 1,800〜2,200 kcal などを示しています。同じ通知は、メニューの多様化や適温の食事の提供への配慮、アレルギー対応食品の要望への支援も求めています。

内閣府の取組指針(令和 6 年 12 月改定)は、食物アレルギーのある人への配慮として、提供する食事の原材料の表示を示した包装や、食材を示した献立表を掲示して避難者が確かめられるようにすること、アレルギーの対象の食品を示したビブスやサインプレートを活用することを挙げています。炊き出しの献立は、使った材料を書いて貼り出します。災害時の栄養の考え方は「災害時の栄養」へ。

役割を分ける

内閣府の取組指針は、避難所の運営の班の一つに「食料班」(食料の配給、炊き出し)を挙げています。小さな炊き出しでも、次のように役割を分けると、衛生と段取りの抜けが減ります(このサイトからの提案)。

役割すること
責任者保健所への連絡、チェック表、全体の時間の管理
衛生の係調理する人の体調の確認、手洗い・手袋、器具の消毒、温度の確認
調理米・汁物・おかず。中心まで加熱する
配膳手袋・ラップでの盛り付け、配る順番、アレルギーの表示
記録作った量・作り終えた時刻・配り終えた時刻・余った量

衛生の決まり(農林水産省・熊本県)

農林水産省の「避難所・炊き出しでの食中毒予防について」と、熊本県の例から、炊き出しに特有の決まりを抜き出しました。

  • 体調の悪い人は食品を扱わない:下痢や腹痛、吐き気や嘔吐のある人、手に傷や化膿のある人、発熱のある人(農林水産省)。
  • 加熱したものを出す:できるだけ加熱したものにし、生ものは避ける(農林水産省)。熊本県の例は、生野菜(きゅうり・トマト・レタスなど)、刺身、生肉、カットフルーツを出さないとしています。
  • 作り置きしない:調理した食品はできるだけ早く提供し、早めに食べてもらう。食べ残しや長時間室温に置いた食品は、再び提供しない(農林水産省)。熊本県の例は、調理後おおむね 2 時間以内に食べられるように配るとしています。
  • おにぎりは素手で握らない:使い捨て手袋やラップを使い、直接ご飯に触れない(農林水産省)。農林水産省は、避難所でおにぎりを原因とする黄色ブドウ球菌の食中毒があったことも紹介しています。
  • 水が足りないときの手:見える汚れをおしぼりやウエットティッシュでよく拭き取り、アルコール消毒剤を十分にすり込んでから、清潔な使い捨て手袋を着ける。手袋をアルコールで消毒して繰り返し使うことは避ける(農林水産省)。
  • 冷蔵・冷凍の材料:保冷剤を入れたクーラーボックスに保管する(熊本県の例)。

大量調理の基準も参考に

厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」は、同じメニューを 1 回 300 食以上または 1 日 750 食以上提供する施設のための基準で、炊き出しにそのまま当てはまるものではありません。ただ、厚生労働省は避難所の食事について、衛生管理はこのマニュアルを参考に食中毒防止を徹底するよう求めています。目安になる数字は次のとおりです。

  • 加熱は、中心部が 75℃で 1 分間以上(ノロウイルスのおそれのある二枚貝などは 85〜90℃で 90 秒間以上)。
  • すぐに提供しない食品は、10℃以下か 65℃以上で管理する。
  • 調理後の食品は、調理が終わってから 2 時間以内に食べることが望ましい。
  • 調理する人は、下痢・嘔吐・発熱などの症状があるときや手指に化膿した傷があるときは、調理をしない。

同じマニュアルは、原材料と調理済みの食品を 50 g 程度ずつ −20℃以下で 2 週間以上保存する「検食」も定めています。大きな炊き出しでは、保健所に保存の要否を確かめると安心です(このサイトからの提案)。

ふだんの練習

地域の防災訓練や防災キャンプで、炊飯袋のご飯や大鍋の汁物を一度作っておくと、本番で米の量や時間に迷いません。キャンプで大人数の食事を作るときも、同じ段取りがそのまま使えます。袋で炊く方法は「ポリ袋調理」、こんろの安全は「カセットこんろとボンベの安全」へ。

英語版には、米国の食品安全の手引きを中心にした別の記事があります:Cooking for a crowd: planning and food safety for big batches。

ふだんは

キャンプや地域の行事で大人数の食事を作るとき、量の見積もりと役割分担、衛生の決まりをそのまま使えます。

もしもの時は

避難所の炊き出しで、何食作るか・米の量・保健所への連絡・作り置きしないことを、慌てずに進められます。

出典と調べた日

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