テントを張る場所の選び方と設営・撤収|中州・河原・枯れ枝の下・強風を避ける

テントを張る場所は、その夜の安全をほぼ決めます。晴れた夕方には平らで気持ちよく見える河原も、上流で雨が降れば川になります。この記事では、国や自治体の資料をもとに、避けたい場所・確かめたいこと・設営と撤収の手順をまとめます。

まず、決められた場所に張る

環境省は、国立公園での利用のマナーとして、植生の破壊、野生動物の誘引、山火事を防ぐため、キャンプやたき火は決められた場所以外ではしないよう求めています。秩父多摩甲斐国立公園のお知らせは、国立公園の中でのテントの設営は、一部の地域やキャンプ場などを除き、原則として自然公園法の規制の対象になるとしています。中部山岳国立公園も「指定地以外でのテント泊は禁止です」と案内しています。

キャンプ場の中でも、区画やサイトの決まりに従います。場所の選び方は、その決まりの中で考えます。

避けたい場所 1:川の中州と河原

1999 年(平成 11 年)8 月の神奈川県・玄倉川の事故について、国土交通省中部地方整備局はこう記録しています。8 月 13 日の午後に降り出した雨は夜には 1 時間に 25 mm の強い雨になり、多くのキャンパーは避難しましたが、事故現場の 18 名は再三の警告にも従わず立ち去りませんでした。翌朝、水深は普段より 85 cm ほど高い 100 cm に達して中州に取り残され、助かったのは 5 人、13 名が亡くなりました。累計の雨量は最終的に 29 時間で 349 mm でした。

国や自治体の資料が繰り返し書いているのは、次のことです。

  • 中州は川そのもの:多少草が生えていても中州は川で、増水すれば水につかる。逃げ道のない中州は水難事故が多い(国土交通省 豊橋河川事務所)。
  • 水の気配がなくても:水の気配のない場所にテントを張っていても、あっという間に水没することがある(同)。
  • 草の生えていない河原:草が生えていないところは、増水したときに水が流れている証(政府広報オンライン)。
  • 晴れていても:今いる場所が晴れていても、上流で雨が降ると水が急に増える。上流にダムがある川では、天候に関係なく放流されることがある(国土交通省 中部地方整備局)。

政府広報オンラインは、川の水が急に増えるサインとして、上流の空に黒い雲が見える、雷が聞こえる、雨が降り始める、落ち葉や流木・ごみが流れてくる、水が急に冷たく感じる、水位が急に低くなる、を挙げ、すぐに避難するよう呼びかけています。最後の「水位が下がる」は、増水とは逆に見えるので見落としやすいサインです(このサイトの考え)。川遊びの注意は「川遊びの水難を防ぐ」へ。

キャンプ場の管理者向けの基準でも同じです。環境省の「自然公園等施設技術指針」は、テントサイトを、急傾斜地や増水が考えられる河川敷などの危険が予想されるところには置かず、地表の水はけのよい平らな土地か、ゆるやかな傾斜地を選ぶとしています。

避けたい場所 2:枯れ枝の下、崖や斜面の下

同じ技術指針は、テントサイトの上に突き出した木の枝は特に注意して点検し、落ちてくる枝に注意すること、枯れた木や枯れ枝はすみやかに処理することを求めています。管理されたキャンプ場でも、張る前に一度真上を見上げる習慣をつけます(このサイトからの提案)。

米国の国立公園局(NPS)は、テントを張る前に、鉄砲水・雷・風・枯れ木や枯れ枝などの危険に気をつけ、頭上に枯れ枝が見えたらその下に張らないよう呼びかけています。グランドキャニオン国立公園は、大雨の最中と後は落石や崩れに注意し、明らかに以前に石が落ちた場所にとどまらないよう書いています。斜面の下に落ちた石が転がっている場所は避けます。

避けたい場所 3:風をまともに受ける場所

気象庁の「風の強さと吹き方」の表から、テントにかかわる行を抜き出しました。

平均風速予報用語人への影響屋外・樹木の様子
10 以上 15 未満 m/sやや強い風風に向かって歩きにくくなる。傘がさせない樹木全体が揺れ始める。電線が揺れ始める
15 以上 20 未満 m/s強い風風に向かって歩けなくなり、転倒する人も出る。高所での作業はきわめて危険電線が鳴り始める。看板やトタン板が外れ始める
20 以上 25 未満 m/s非常に強い風何かにつかまっていないと立っていられない。飛来物によって負傷するおそれがある細い木の幹が折れたり、根の張っていない木が倒れ始める

気象庁は、平均風速は 10 分間の平均で、瞬間風速は平均風速の 1.5 倍程度になることが多く、大気の状態が不安定なときは 3 倍以上になることがあること、風速は地形や周りの建物に影響されるので、その場所の風速は近くの観測所の値と大きく違うことがあると注意しています。

予報で「やや強い風」が出ている日は、尾根や広い河原のような吹きさらしを避け、林の縁など風が弱まる場所を選び、張り綱をすべて張ります。「強い風」の予報なら、設営しない・早めに撤収するのが無難です(このサイトの考え)。雷のときの動き方は「雷から身を守る」へ。

場所を決めるときのチェック(このサイトからの提案)

見る所確かめること
足もと平らで水はけがよいか。くぼ地(雨が集まる)や草の生えていない河原ではないか
頭上枯れ枝・折れた枝がぶら下がっていないか
背後崖や急な斜面、落石の跡がないか
風上吹きさらしではないか。風向きに対して入口が背を向けるか
逃げ道増水や落石のとき、高い所へ歩いて逃げられる道があるか
天気泊まる場所だけでなく、上流の雨の予報と、気象庁の洪水キキクル

設営の手順(このサイトからの提案)

  1. 明るいうちに着く:場所の見極めは、暗くなると難しくなる。
  2. 地面をならす:石や枝、とがった物を取り除く。寝るときに頭が少し高くなる向きを選ぶ。
  3. 入口の向きを決める:風上に背を向ける。
  4. 張る:説明書の順に組み、ペグはロープに対して斜めに打つ。張り綱はゆるみを調整できる「自在結び」で(ロープの基本の結び方)。
  5. 夜の前にもう一度:張り綱のゆるみ、周りの水の流れ道、明かりの置き場所を確かめる。

撤収と、しまう前に乾かす

撤収は、火の始末とごみの持ち帰りを済ませてから、設営の逆の順で行います。濡れたままのテントは、帰ってから必ず乾かします。メーカーのモンベルは、汚れや水分が付いたまま長く保管するとコーティングの劣化が早まり、カビの原因にもなるとして、汚れを落とし十分に乾燥させてから保管するよう案内しています。一方で、日光の当たる屋外に長く干しっぱなしにすると、紫外線でコーティングの強度が大きく下がるとも書いています。

もしもの時に置き換えると

災害のあとに庭や公園でテントを張る場面でも、同じ見方が使えます。低い土地・川の近く・崖の下を避け、頭上の電線や傾いた木、ブロック塀から離れます(このサイトの考え)。テントの中で火を使わないことは「テントや車の中で火を使わない」、家族で一晩試すなら「防災キャンプの始め方」をご覧ください。

ふだんは

キャンプでは、足もと・頭上・背後・風上・逃げ道を見てからテントを張ります。

もしもの時は

災害のあとに庭や公園でテントを張るときも、低い土地や崖の下、倒れそうな木や塀の近くを避ける同じ見方が使えます。

出典と調べた日

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