第14章 キャンプの歴史の年表
このページは「キャンプ指導の基礎」の一部です。キャンプ指導の一般的な知識をまとめたもので、特定の資格講習の公式教材ではありません。本文の[番号]は、ページの下の「出典と調べた日」の番号です。
1861 年の米国のキャンプから、日本の明治期の「慈善旅行」、YMCA・ボーイスカウト・国の施設、国際キャンプ会議、2020 年の感染症への対応まで、世界と日本のキャンプの出来事を 1 つの年表にまとめ、確かめた資料と、資料による違いを示します。
このページで学ぶこと
- 世界と日本のキャンプの主な出来事と、その順番
- 資料によって年や「最初」が違う出来事と、その理由
- 人類の長い歴史の中での、自然と離れた暮らしの短さ
「第2章 野外教育の歴史と考え方」では、歴史の大きな流れと考え方を見ました。このページでは、世界と日本の出来事を 1 つの年表にまとめ、それぞれの出来事を確かめた資料を示します。資料によって年や場所が違うものは、その違いも書きました。
世界と日本のキャンプの年表
| 年 | 国・地域 | 出来事 |
|---|---|---|
| 1861 | 米国 | ガナリー・スクールの校長 F. W. ガン夫妻が、生徒と 2 週間の野営生活をする(コネチカット州)。組織キャンプの最初とされる[1][2]。場所はミルフォードとする資料[1]と、ワシントンとする資料[2]がある |
| 1876 | 米国 | 医師 J. T. ロスロックが、健康づくりを主な目的にしたキャンプを始める(ペンシルベニア州)[2] |
| 1880 | 米国 | 牧師 G. W. ヒンクリーが、最初の教会キャンプを行う(ロードアイランド州)[1][2] |
| 1881 | 米国 | ブルックリン YMCA が、30 人の少年を「キャンプアウト」に連れて行ったと報告する[3] |
| 1885 | 米国 | ニューバーグ YMCA のサムナー・F・ダッドレーが、7 人の少年と 8 日間のキャンプを行う[1]。今も続く Camp Dudley は、この年を始まりとしている[4] |
| 1895 | ドイツ | ベルリン郊外の野山を歩くことから、ワンダーフォーゲル(渡り鳥)運動が始まる[1] |
| 1901 | 日本 | 福田会育児院が、子どもを栃木県の塩原温泉へ連れて行く(「避暑保育」)。日本キャンプ協会の研究誌は、明治・大正期のこうした「慈善旅行」を、組織キャンプにあたる取り組みとして調べている[5] |
| 1902 | 米国 | ローラ・マトゥーンが、女子のためだけのキャンプ「キャンプ・ケホンカ」を開く(ニューハンプシャー州)[2] |
| 1907 | 英国 | ベーデン=パウエルがブラウンシー島でキャンプを行い、ボーイスカウト運動が始まる[1] |
| 1910 | 英国 | ベーデン=パウエルの妹アグネスによって、ガールスカウト(ガールガイド)が生まれる[1] |
| 1910 | ドイツ | 小学校教師リヒャルト・シルマンにより、ユースホステル運動が始まる[1] |
| 1916 | 日本 | ボーイスカウト(京都少年義勇団)が、琵琶湖畔の雄松岬でキャンプをする[1] |
| 1917 | 日本 | 東京府慈善協会が、保育所の幼児の夏期「転住事業」を千葉県八幡宿で行う。同協会の会報に載った最初の組織キャンプの記事とされる[5]。この事業を 1907 年とする年表もあるが、協会自体の設立が 1917 年[5] |
| 1920 | 日本 | 大阪 YMCA の少年部が、六甲山東麓(南郷山)で簡易天幕のキャンプを行う。日本 YMCA 同盟はこれを「日本における最初のキャンプ」としている[6]。同じ年、ガールスカウトも猪苗代湖畔でキャンプを行う[1] |
| 1923 | 日本 | 東京 YMCA が山中湖畔に、日本で初めての組織キャンプ場を開く[6] |
| 1931 | 日本 | 東京 YWCA の野尻キャンプが、若い女性の心身の育成とリーダーシップの養成のために始まる(長野県野尻湖畔)[7] |
| 1936 | カナダ | カナダキャンプ協会の最初の会合が開かれる[8] |
| 1941 | 英国 | ウェールズの海岸のアバディフィに、アウトワード・バウンド・スクールが開かれる[9] |
| 1951 | 日本 | 読売新聞社が、長野県戸隠高原で「第 1 回全日本(高校)学生キャンプ」を開く[1] |
| 1953 | 日本 | 神戸 YMCA の余島キャンプ場(1950 年開設)で、日本で最初の「肢体不自由児キャンプ」が行われる[6] |
| 1959 | 日本 | 国立中央青年の家を設置(静岡県御殿場市)。以後、全国に国立青年の家を置く[10] |
| 1961 | 日本 | スポーツ振興法が制定される。2011 年にスポーツ基本法へ全部改正[11] |
| 1975 | 日本 | 国立室戸少年自然の家を設置。以後、全国に国立少年自然の家を置く[10] |
| 1983 | カナダ | トロントで国際キャンプ会議が開かれる[12] |
| 1984 | 日本 | 文部省が自然教室推進事業を始める[1] |
| 1987 | 米国 | ワシントン D.C. で国際キャンプ会議が開かれる[12] |
| 1988 | カナダ | ハンツビルでの会合で、国際キャンプ連盟(ICF)が設立される[12] |
| 1997 | 日本 | 日本野外教育学会が設立総会を開く[13] |
| 2000 | 日本 | 東京で国際キャンプ会議が開かれる[12]。自然体験活動推進協議会(CONE)が設立される[14] |
| 2001 | 日本 | 国立青年の家・国立少年自然の家・国立オリンピック記念青少年総合センターが、独立行政法人として発足[10] |
| 2003〜2004 | アジア・オセアニア | 2003 年、メルボルンでの国際キャンプ会議の際にアジア・オセアニアのキャンプの連盟(Asia Oceania Camping Fellowship)ができ、2004 年に第 1 回アジア・オセアニアキャンプ会議が開かれる[12]。連盟の設立を 2004 年とする資料もある |
| 2005 | 日本 | 愛・地球博(愛知万博)で、「森の自然学校」「里の自然学校」などの自然体感プログラムが行われる[15] |
| 2006 | 日本 | 上の 3 つの独立行政法人が統合し、国立青少年教育振興機構が発足[10] |
| 2008 | 日本 | 文部科学省が、小学校の 1 週間の自然体験活動を支えるため、「全体指導者」と「補助指導者」を養成する自然体験活動指導者養成事業を始める(2008〜2012 年度)[16][17]。のちに、この全体指導者は NEAL の資格へ移行登録できるようになった[17] |
| 2011 | 日本 | 東日本大震災で被災した子どもと家族のためのリフレッシュキャンプを、日本 YMCA 同盟が全国で行う。大切な人を亡くした子どものためのグリーフケア・キャンプも続けている[6] |
| 2015 | 日本 | 文部科学省の外局として、スポーツ庁が設置される[18] |
| 2016 | 日本 | 東京で第 6 回アジア・オセアニアキャンプ会議が開かれる[12] |
| 2017 | ロシア | ソチで国際キャンプ会議が開かれる[12] |
| 2020 | 日本 | 日本キャンプ協会と日本 YMCA 同盟が、アメリカキャンプ協会の「キャンプ運営ガイドライン」を共同で翻訳し、新型コロナウイルスの影響下での活動再開に向けて公開する[19] |
| 2023 | スペイン | タラゴナで第 12 回国際キャンプ会議が開かれる[12] |
日本の組織キャンプは、20 世紀の初めから、ボーイスカウト、ガールスカウト、YMCA、YWCA などの主に民間の青少年団体によって進められてきました。1950 年から 1970 年にかけては、特別な課題に向き合うキャンプも開かれるようになりました[1]。障害のある子どものキャンプや、大切な人を亡くした子どものキャンプは、その流れの上にあります。
年表の読み方の注意
- 「最初の」は、何を数えるかで変わる:日本の「最初のキャンプ」は、1916 年のボーイスカウト、1920 年の大阪 YMCA など、団体ごとに挙げる出来事が違います。さらに古い明治期の「慈善旅行」を調べた研究もあります[5]。どれが正しいかではなく、「何を組織キャンプと呼ぶか」の違いです。
- 年表どうしで年が違うことがある:上の 1917 年の転住事業のように、年表によって年が違う出来事もあります。年表を引用するときは、その出来事を直接記録した資料に当たると確かです。
人類の歴史を 100 m のトラックに置きかえる
人類の系統で最も古い種の一つは、およそ 700 万〜600 万年前に生きていたとされます[20]。わたしたちホモ・サピエンスの化石は、少なくとも約 30 万年前までさかのぼります[21]。食べ物を自分たちで育てるようになったのは、この 1 万 2000 年ほどのことです[22]。
700 万年を 100 m のトラックに置きかえると、次のようになります(計算はこのサイト)。
| 出来事 | 何年前 | 100 m のトラックでは |
|---|---|---|
| 人類の系統の始まり | 約 700 万年前 | スタート(ゴールの 100 m 手前) |
| ホモ・サピエンスの登場 | 約 30 万年前 | ゴールの約 4.3 m 手前 |
| 食べ物を育て始める | 約 1 万 2000 年前 | ゴールの約 17 cm 手前 |
| 祖父母の世代が子どもだったころから今まで | 約 70 年 | ゴールの約 1 mm 手前 |
人類は、その歴史のほとんどを、自然の中で、自然に合わせて暮らしてきました。電気の明かりの下で夜ふかしをし、季節に関係なく同じものを食べる暮らしは、トラックの最後の 1 mm ほどの出来事です。キャンプは、その長い時間の暮らしを、短い間だけ思い出す体験だと言えるかもしれません(このサイトの考え)。
考えてみよう
- 年表の中から、あなたの所属する団体や地域に関わりのある出来事を探してみましょう。
- 「日本で最初のキャンプ」がいくつも挙げられるのはなぜでしょうか。「組織キャンプ」の条件と合わせて考えてみましょう。
このサイトの関連する記事
ふだんは
家族で出かけるキャンプ場や青少年の施設の「あゆみ」を調べてみると、その場所がどんな人の思いで始まったかが分かります。
もしもの時は
電気やガスが止まった夜は、人類が長く暮らしてきた夜に近い夜です。キャンプの経験は、その夜を落ち着いて過ごす助けになります。
出典と調べた日
- [1] 日本キャンプ協会「キャンプの歴史」 (2026-11-02 に確認)
- [2] Rillo, T. J. “Historical Background and Development of Camping and Outdoor Education”(ERIC ED067171) (2026-11-02 に確認)
- [3] YMCA “Firsts and Foremosts” (2026-11-02 に確認)
- [4] Camp Dudley & Kiniya “About” (2026-11-02 に確認)
- [5] 日本キャンプ協会『キャンプ研究』Vol.25(2022 年 1 月) (2026-11-02 に確認)
- [6] 日本 YMCA 同盟「YMCA キャンプ 100 年」 (2026-11-02 に確認)
- [7] 東京 YWCA「野尻キャンプ」 (2026-11-02 に確認)
- [8] Canadian Camping Association “History” (2026-11-02 に確認)
- [9] Outward Bound International “Our History” (2026-11-02 に確認)
- [10] 総務省 掲載資料「独立行政法人国立青少年教育振興機構」(沿革) (2026-11-02 に確認)
- [11] e-Gov 法令検索「スポーツ基本法」 (2026-11-02 に確認)
- [12] International Camping Fellowship “History” (2026-11-02 に確認)
- [13] 日本野外教育学会「学会について」 (2026-11-02 に確認)
- [14] EICネット 環境用語集「CONEリーダー登録制度」 (2026-11-02 に確認)
- [15] 2005年日本国際博覧会協会「自然体感プログラム」 (2026-11-02 に確認)
- [16] 文部科学省 平成 20 年度 事前評価「青少年体験活動総合プラン」 (2026-11-02 に確認)
- [17] 国立青少年教育振興機構「自然体験活動指導者(NEAL)」 (2026-11-02 に確認)
- [18] スポーツ庁「スポーツ庁創設の経緯」 (2026-11-02 に確認)
- [19] 日本キャンプ協会「アメリカキャンプ協会策定『キャンプ運営ガイドライン(日本語版)』公開」(2020 年 6 月 18 日) (2026-11-02 に確認)
- [20] Smithsonian National Museum of Natural History “Sahelanthropus tchadensis” (2026-11-02 に確認)
- [21] Smithsonian National Museum of Natural History “Our species arose at least 300,000 years ago” (2026-11-02 に確認)
- [22] Smithsonian National Museum of Natural History “Humans Change the World” (2026-11-02 に確認)