第15章 人の発達の理解

このページは「キャンプ指導の基礎」の一部です。キャンプ指導の一般的な知識をまとめたもので、特定の資格講習の公式教材ではありません。本文の[番号]は、ページの下の「出典と調べた日」の番号です。

中央教育審議会の答申が示す発達の 4 つの時期と、ピアジェ、エリクソン、ハヴィガースト、コールバーグの発達の理論、子育ての関わり方の型を、キャンプでの関わり方に生かす視点で学びます。

このページで学ぶこと

  • 発達の時期ごとに大切なことと、キャンプでの生かし方
  • ピアジェ・エリクソン・ハヴィガースト・コールバーグの理論の要点
  • 家庭での関わりを評価せず、温かく枠組みのある関わりを心がける理由

「第5章 対象者を理解する」では、年代ごとの一般的な傾向と関わり方のヒントを見ました。このページでは、その背景にある「発達」の考え方と、よく知られた発達の理論を、キャンプでの生かし方と合わせて学びます。

発達の時期と、その時期に大切なこと

中央教育審議会の答申「次代を担う自立した青少年の育成に向けて」(2007 年)は、子どもから大人になるまでを 4 つの時期に分け、それぞれの時期に大切なことを次のように示しています[1]。

時期おおよその年齢その時期に大切なこと(答申の要約)
乳幼児期小学校に入る前親など特定の少数の人との強い情愛のきずなをつくり、複数の人との関わりを通して認知や情緒を発達させ、人格をつくっていく
学童期小学生のちの成長の基礎になる体力・運動能力を身につけ、多様な知識と経験をたくわえ、家族や仲間との関係の中で、自分の役割や連帯感などの社会性を身につける
思春期おおむね中学生〜高校生「自分らしさを確立するために模索し,社会規範や知識・能力を修得しながら大人への移行を開始することが重要」
青年期おおむね高校卒業後親の保護から抜け出し、社会の一員として自立した生活を営み、公共に参画し、貢献していく

キャンプに置きかえると、次のように考えられます(このサイトの考え)。

  • 小学生には、体を使って具体的に取り組める課題と、班の仲間と一緒にやりとげる活動が向いています。仲間意識が強くなる高学年は、グループの力が大きくなる一方で、仲間外れも起きやすい時期です。指導者は班の関係の変化に目を配ります。
  • 中学生・高校生には、自分で計画し、判断し、責任を持つ機会(選べるプログラム、リーダー役、ふりかえりで意見を言う場)を用意します。理想と現実のずれに悩む時期なので、答えを与えるより、話を聴く姿勢を大切にします。
  • 大学生などの青年は、ジュニアリーダーやキャンプカウンセラーとして「指導する側」を経験することで、大きく成長します。

よく知られた発達の理論

発達の理論は、子どもの姿を見るための「めがね」の一つです。理論に子どもを当てはめるのではなく、目の前の子どもを理解する手がかりとして使います。年齢の区切りは目安で、資料によっても違います。

ピアジェ:考え方の発達

J. ピアジェは、子どもの考え方(認知)の発達を、感覚運動期・前操作期・具体的操作期・形式的操作期の 4 つの段階に分けました[2]。

段階年齢の目安特徴
感覚運動期誕生から言葉を身につけるころまで見る・触る・動かすことを通して、世界を理解していく[2]
前操作期具体的操作期の前(おおよそ 7 歳ごろまで)言葉やイメージで考えられるようになるが、自分の見方から離れて考えるのはまだ難しい
具体的操作期7〜11 歳ごろ具体的な物事について、筋道を立てて考えられるようになる[2]
形式的操作期11 歳ごろから(14〜15 歳ごろに完成)抽象的なことを、記号を使って論理的に考えられるようになる[2]

キャンプの多くの参加者である小学生は、具体的操作期にあたります。「火の三要素」を言葉で教えるより、実際に空気の通り道をふさいで火が弱まるのを見せるほうが、深く分かります(このサイトの考え)。

エリクソン:人生の 8 つの段階

E. H. エリクソンは、人生を 8 つの段階に分け、それぞれの段階に、向き合う課題(対立する 2 つの傾向)と、それを乗り越えて得られる力があると考えました[3]。

段階(年齢は資料の目安)向き合う課題得られる力
乳児期(1 歳未満)基本的信頼 対 不信希望
幼児期前期(1〜2 歳)自律性 対 恥・疑惑意志
遊びの時期(3〜6 歳)自主性 対 罪悪感目的
学童期(7〜10 歳)勤勉性 対 劣等感有能感
青年期(11〜19 歳)同一性(アイデンティティ)対 同一性の混乱忠誠
成人前期(20〜44 歳)親密性 対 孤立愛
成人期(45〜64 歳)世代性 対 停滞世話
老年期(65 歳以上)統合 対 絶望英知

キャンプは、学童期の「やればできる」という感覚(勤勉性)や、青年期の「自分は何者か」という問い(同一性)に向き合う、よい機会です。まきを割る、班の食事を作りきる、といった「自分の力でやりとげた」経験を、指導者が言葉にして認めます(このサイトの考え)。

ハヴィガースト:発達課題

R. J. ハヴィガーストは、人生を誕生から老年まで 6 つの段階(乳幼児期、児童期、青年期、成人前期、中年期、老年期)に分け、それぞれの段階で達成することが望まれる「発達課題」を示しました[4]。児童期(6〜12 歳)は、遊びに必要な体の技能や、同じ年ごろの仲間とのつきあい方を身につける時期として語られることが多く、キャンプの生活はその練習の場になります(このサイトの考え)。

コールバーグ:道徳性の発達

L. コールバーグは、道徳的な判断の発達を、前慣習的・慣習的・後慣習的の 3 つの水準に分け、それぞれを 2 つの段階に分けました(計 6 段階)[5]。

水準段階(要約)
前慣習的① 罰を避ける ② 自分の得になるか
慣習的③ 周りから「よい子」と認められる ④ 決まりや社会の秩序を守る
後慣習的⑤ みんなで決めた約束として決まりを考える(決まりは変えられると分かる) ⑥ 普遍的な倫理の原則に従う

キャンプの約束を、指導者が一方的に決めるのではなく、班で話し合って決めると、「なぜその約束が必要か」を考える機会になります(このサイトの考え)。約束の考え方は「第13章 ルールとマナー、指導者の責任」へ。

家庭での関わりと、キャンプでの関わり

子育ての関わり方の研究では、D. バウムリンドが 1960 年代に、権威ある(authoritative)・権威主義的(authoritarian)・許容的(permissive)の 3 つの型を示しました。その後、マッコビーとマーティンが、子どもに求めること(要求)が多いか少ないか、子どもに応えること(応答)が多いか少ないか、という 2 つの軸で整理し、関与の少ない型を加えた 4 つの型にしました[6]。

ただし、どんな関わりを受けたかで子どもの性格が決まってしまう、という意味ではありません。中央教育審議会の答申は、乳幼児期の「愛着」の体験が十分でなかった場合でも、後に適切な愛着が形成されて大きく成長した事例が報告されているとして、「後からでもやり直しがきく部分があると考えられる」と述べています[1]。

キャンプ指導者が学ぶべきなのは、保護者を評価することではなく、子どもが家庭でどんな関わりを受けてきたかに思いをめぐらせ、キャンプでは温かく、かつ必要な枠組み(約束と見通し)のある関わりを心がけることです(このサイトの考え)。

友だちのでき方と、キャンプ

小さいころは「家が近い」「席が隣」といった近さで友だちになることが多く、年齢が上がるにつれて、考え方が合う、尊敬できる、一緒に目標に向かった、といった理由が大きくなっていきます(このサイトの整理)。キャンプでは、同じ班で暮らし、課題に一緒に取り組むことで、ふだんの学校とは違う友だちができやすくなります。班の分け方を考えるときの参考にしてください。グループの変化と関わり方は「第8章 グループへの関わりとキャンプカウンセリング」へ。

考えてみよう

  1. あなたが担当する年代の参加者にとって、キャンプで「やればできる」と感じられる場面はどこにありますか。
  2. 班の約束を話し合って決めるとき、指導者はどんな問いかけをするとよいでしょうか。

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子どもに家の手伝いを任せるときは、やり方を具体的に見せ、できたことを言葉にして認めると、「やればできる」という感覚が育ちます。

もしもの時は

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