実技6 登山・オリエンテーリング・ウォークラリー
このページは「キャンプ指導の基礎」の一部です。キャンプ指導の一般的な知識をまとめたもので、特定の資格講習の公式教材ではありません。本文の[番号]は、ページの下の「出典と調べた日」の番号です。
登山の計画の立て方と保険、登山計画書と県の登山届の条例、山を歩くときの注意、オリエンテーリングとウォークラリーの運営と安全の要点を学びます。
このページで学ぶこと
- 登山の計画で決めることと、山岳登はんの保険
- 登山計画書と、届出を義務づけている県の条例
- オリエンテーリングの基本と、施設で行うときの運営
- ウォークラリーとコマ図
登山の計画
登山は、キャンプの中の活動としても、単独の活動としても行います。どちらも事前の計画が欠かせません。計画で決めることを整理すると、次のようになります(このサイトの整理)。
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 目的 | 何をするかだけでなく、なぜ・何のためにその山に行くのか |
| 参加者 | 人数、年齢と体力の差、経験の度合い |
| 日程 | 季節、日帰りか宿泊か、往復か縦走か、雪の有無。予備日も取る |
| 場所とルート | 参加者の体力と技術に合うか。山小屋・避難小屋、途中で下りられる道(エスケープルート)があるか |
| 体制 | リーダー・サブリーダー、装備・食料・救急の担当 |
| 保険 | 傷害保険と賠償責任保険。ピッケル・アイゼン・ザイルなどを使う登山は「山岳登はん」として、一般の傷害保険では支払いの対象外とする約款がある[1][2]ので、山岳保険を確かめる |
| 事後 | 記録の整理、報告会、用具の手入れ |
下見では、交通と所要時間、落石・岩場・鎖場・ぬかるみ・沢沿いの道などの危険箇所、迷いやすい分岐、雷や天候の急変のときの避難場所、電波の届かない区間、休憩場所・トイレ・水場、区間ごとの所要時間を確かめます(このサイトからの提案)。下見全般は「実技8 下見とキャンプの危険」へ。
登山計画書(登山届)
登山計画書は、万一のときに捜索と救助の手がかりになります。メンバー(氏名・年齢・緊急連絡先)、日ごとの行動予定と予備日、ルート、荒天や非常時の対策とエスケープルート、食料と非常食、装備、連絡手段を書き、家族など留守を預かる人に必ず渡します。提出は、登山口の登山届ポスト、警察、自治体や警察と連携したオンラインの登山届などで行います。
条例で登山届の提出を義務づけている県もあります。対象の山域・期間・罰則は県ごとに違います[3]。
| 県 | 対象 | 罰則など |
|---|---|---|
| 群馬県 | 谷川岳の岩場地帯の危険地区。12 月 1 日から翌年 2 月末日の冬山の期間を除き、登山の 10 日前までに届出。冬山の期間は危険地区に登山しないよう努める[4] | 3 万円以下の罰金[4] |
| 富山県 | 剱岳と周辺の山域で、12 月 1 日から翌年 5 月 15 日まで。登山の 20 日前までに届出[5] | 5 万円以下の罰金または科料[5] |
| 岐阜県 | 北アルプス地区と、活火山地区(御嶽山・焼岳・白山・乗鞍岳)[6] | 5 万円以下の過料[3] |
| 長野県 | 県が指定した「指定登山道」[7] | 罰則の規定なし[3] |
| 山梨県 | 12 月 1 日から 3 月 31 日まで、富士山(3,000 m 以上)・八ヶ岳・南アルプスの決められた山域で義務。富士山などの山域で通年の努力義務[8] | 罰則の規定なし[3] |
| 新潟県 | 新潟焼山の活火山地区(山頂から半径 2 km 以内)[9] | 届出をせずに登山した者への警告に従わない場合、5 万円以下の過料[3] |
| 石川県 | 白山の活火山地区[10] | 5 万円以下の過料[3] |
対象の範囲や期間は変わることがあります。出かける前に、各県の公式サイトで確かめてください。
山を歩くときの注意
- ペース:いちばん体力のない人に合わせ、隊列の先頭と最後尾に指導者を置く(このサイトからの提案)。
- 最初の休憩:日本山岳会は、歩き始めは体温が温まるまで 20〜30 分かけ、服装の調整や靴ひもの確認をして 5 分ほど休んでから再出発するのがよいとしています[11]。その後は定期的に短い休憩で、水分と行動食をとります。
- 道に迷ったら:分かる地点まで引き返すのが原則で、沢を下ると滝や崖に行き当たることが多い、とよく言われます(このサイトの考え)。
- 天候と生き物:雷・霧・強風・低体温症、ハチ・マダニ・ヘビ・クマ。夏でも山の上は冷え、濡れと風で体温が奪われます。
オリエンテーリング
日本オリエンテーリング協会は、オリエンテーリングを、専用に作られた地図を使い、自然の中に置かれたチェックポイント(コントロール)をたどりながら、できるだけ短い時間で走り切るアウトドアスポーツと説明しています[12]。最も一般的なルールでは、紫の △ のスタートから、○ のチェックポイントを順番どおりに通り、◎ のフィニッシュまでの時間を競います[12]。チェックポイントごとに得点を決め、制限時間内にどれだけ得点を集めるかを競う形(スコア・オリエンテーリング)もあります[13]。
キャンプ場や施設の敷地で行う入門の形には、次のようなものがあります(静岡県立朝霧野外活動センターの利用の手引きの例)[14]。
- 地図とコンパスで、敷地内の 10〜20 個のポイントを制限時間内に探し、得点を競う。
- ポイント付近の写真が入った地図で、ポイントを探してキーワードを集める(フォト・オリエンテーリング)。
- 2〜12 m 四方に置いた 20 個のポイントを、地図に示された順に回り、正確さと速さを競う(ラビリンス・オリエンテーリング)。
運営の要点は次のとおりです(このサイトからの提案)。
- 敷地の中でも、実地踏査は必ず行う。
- スタート前に、けがや体調不良のときの行動を決めて伝える。自力で(または仲間の助けで)動けるならスタート地点に戻る。動けないときはその場で待ち、仲間に指導者を呼びに行ってもらう。
- 現在地が分からなくなったら分かっていた場所まで戻る、制限時間になったらスタート地点に戻る、と決めておく。
- 本部に待機する人、コースを巡回する人、すぐ動かせる車を決める。チェックポイントに指導者が立つと、それ自体が目印になってしまうので、巡回を基本にする。
- 警報が出たとき、天候の悪化が予想されるとき・悪化したとき、参加者や指導者が明らかに疲れているときは、コースの短縮や中止を考える。
- 夏は熱中症(暑さ指数)、やぶではマダニ(マダニとSFTS)に注意する。
ウォークラリー
笹川スポーツ財団によると、ウォークラリーは、道順を示した図(コマ図)を頼りにコースを歩き、途中のチェックポイントで課題に取り組むゲームで、速さは競いません[15]。決められた時間と実際にゴールした時間の差から出す「時間得点」と、チェックポイントなどの課題の正解率から出す「課題得点」で評価します[15]。
コマ図は、交差点や分かれ道ごとに 1 コマを使い、その地点での進み方を示します。国立吉備青少年自然の家の説明では、「●」が現在地、「↑」が進行方向です[16]。体力の差があるグループでも楽しめ、課題に協力の要素を入れると、課題解決の活動にもなります。公道を歩くコースでは、交通量の少ない道を選び、横断する場所に指導者を立て、車道に広がって歩かないよう指導します(このサイトからの提案)。
考えてみよう
- 近くの山で日帰りの登山を計画するとして、エスケープルートはどこにありますか。
- オリエンテーリングの前に、参加者に「動けなくなったときの行動」をどう伝えますか。
このサイトの関連する記事
ふだんは
家族の登山でも、計画書を家に置いて出かけ、最初の休憩で服と靴ひもを整えます。
もしもの時は
地図とコマ図を読む力、決めた時刻に戻る習慣は、災害時に知らない道を歩いて避難するときにも役立ちます。
出典と調べた日
- [1] au損保 よくあるご質問(山岳登はんの補償) (2026-11-02 に確認)
- [2] チューリッヒ保険 よくあるご質問(山岳登はん中のケガ) (2026-11-02 に確認)
- [3] 一般財団法人 地方自治研究機構「登山安全条例・遭難防止条例、スキー場安全条例」(令和7年12月1日更新) (2026-11-02 に確認)
- [4] 群馬県谷川岳遭難防止条例(PDF) (2026-11-02 に確認)
- [5] 富山県「富山県登山届出条例に基づく登山届の提出について」(2024年11月19日更新) (2026-11-02 に確認)
- [6] 岐阜県 飛騨県事務所「北アルプス地区・活火山地区への登山には登山届の提出が必要です!」 (2026-11-02 に確認)
- [7] 長野県「長野県登山安全条例」 (2026-11-02 に確認)
- [8] 山梨県「山梨の登山・山岳情報ポータル」 (2026-11-02 に確認)
- [9] 新潟県「新潟焼山における火山災害による遭難の防止に関する条例について」(2024年7月12日更新) (2026-11-02 に確認)
- [10] 石川県「白山の登山届の提出の義務化について」 (2026-11-02 に確認)
- [11] 公益社団法人 日本山岳会「山を知ろう」(親子登山) (2026-11-02 に確認)
- [12] 公益社団法人 日本オリエンテーリング協会「オリエンテーリングをやってみよう」 (2026-11-02 に確認)
- [13] 日本オリエンテーリング協会「大会形式」 (2026-11-02 に確認)
- [14] 静岡県立朝霧野外活動センター『利用の手引き』(令和5年度後期・PDF) (2026-11-02 に確認)
- [15] 笹川スポーツ財団 スポーツ辞典「ウォークラリー」 (2026-11-02 に確認)
- [16] 国立吉備青少年自然の家「ウォークラリー はじめにお読みください」(PDF) (2026-11-02 に確認)