第17章 キャンプの運営:役割・企画・キャンプ場・健康調査

このページは「キャンプ指導の基礎」の一部です。キャンプ指導の一般的な知識をまとめたもので、特定の資格講習の公式教材ではありません。本文の[番号]は、ページの下の「出典と調べた日」の番号です。

キャンプのプログラムを「その場で届けるもの」として捉える考え方、指導者の役割の分け方と当日の分業、活動の企画と見直し、話の聴き方と集まり方、キャンプ場を選ぶときの基準、健康調査票の使い方と個人情報の扱いを学びます。

このページで学ぶこと

  • プログラムの 3 つの性質と、指導者どうしで約束をそろえる理由
  • カウンセラーとマネジメントスタッフの分業
  • 活動の企画と見直しの観点
  • キャンプ場の基準の数字と、健康調査票・個人情報の扱い

プログラムは「その場で届けるもの」

キャンプのプログラムは、料理や本のような「物」ではなく、その場で人から人へ届けるものです。そこから、次の 3 つの性質が出てきます(このサイトの整理)。

性質意味指導者にとって
やり直せない終われば消え、失敗しても取り返しがつかない準備・下見・シミュレーションを尽くす
目に見えない参加してみないと中身が分からないしおりや説明会で、中身とねらいを参加者と保護者に具体的に伝える
作ると同時に受け取られる指導者が届けたものを、その場で参加者が受け取る指導者のその日の状態と言動が、そのままプログラムの質になる

同じプログラムでも、届ける人が違えば中身が変わります。指導者どうしで、ねらい・手順・安全の約束を前もってそろえておくのは、そのためです。

役割の分け方と、当日の分業

役割主な仕事
キャンプディレクター全体の責任者。ねらいの設定、計画、スタッフのまとめ、保護者や関係機関への対応、実施・中止などの最終判断
キャンプカウンセラー少人数の班に付き、生活と活動をともにしながら、一人ひとりと班の成長を支える
マネジメントスタッフ受付、交通、食材・装備の準備と配付、会場の設営、記録、連絡調整
活動の専門の指導者クライミング、カヌー、クラフトなどの指導と安全管理
看護・救護の担当健康管理、けが・病気の対応、救護の記録

小さなキャンプでは 1 人が複数の役割を兼ねますが、「いま自分はどの役割で動いているか」を意識すると、判断がぶれません。当日は、同じ時間に、カウンセラーは目の前の子どもを、マネジメントスタッフは次の段取りを見ているという分業になります。カウンセラーが子どもに集中できるのは、本部が先回りして準備しているからです。そして毎晩のスタッフミーティングで、班の一人ひとりの健康と人間関係を報告し合うことが、キャンプの安全と成長の支えの土台になります(このサイトの考え)。指導者の役割の考え方は「第6章 キャンプ指導者の役割と資質」へ。

活動を企画する

1 つの活動を企画するときは、キャンプ全体のねらい、参加者の人数と年齢、日程の中の位置、活動のねらい、指導者の人数と役割、準備する物、時間ごとの進め方と安全の注意、雨のときの対応を、1 枚の紙にまとめると抜けが見えます。日本キャンプ協会の「キャンプ指導者入門」の資料(理論編 第 3 章)にも、こうした企画のシートの例があります[1]。

企画ができたら、次の観点で見直します(このサイトからの提案)。

  • ねらい:キャンプ全体のねらいに合っているか。参加者の求めていることを分かっているか。
  • 組み立て:日程の中の時間帯と長さは合っているか。地域の自然や人を生かしているか。
  • 準備:道具は参加者に合っているか。指導者どうしの打ち合わせは十分か。下見を実施と同じ季節・同じ時間帯に行ったか。雨のときの案はあるか。
  • 指導:担当は決まっているか。進め方を頭の中で一度通したか。
  • 安全:道具と施設の状態を確かめたか。危ない場所と道具の使い方を説明したか。緊急時の連絡のしかたは決まっているか。

伝え方と、集まり方

話を聴くときは、うなずき・あいづち、相手の言葉をそのまま返す、言葉にしきれない思いを代わりに言葉にする、話の要点をまとめて返す、気持ちを受け止めたことを言葉で伝える、「はい・いいえ」で終わらない質問をする、といった技法が、援助の仕事のコミュニケーションの本でよく紹介されます(参考:諏訪茂樹『援助者のためのコミュニケーションと人間関係』建帛社)。「はい・いいえ」で答えられる質問は、事実の確認や、話すのが苦手な子への最初の声かけに向いています。

「言葉で伝わるのは 7%だけ」という説は誤解です。この割合を示した心理学者のメラビアン自身が、伝え手が気持ちや態度について話している場合でなければ、この式は当てはまらないと書いています[2]。伝えたい内容をはっきりした言葉にしたうえで、表情や態度をそれに合わせることが大切です。詳しくは「第7章 指導者のためのコミュニケーション」へ。

集まるときの並び方は、目的で選びます(このサイトの整理)。

並び方向いている場面気をつけること
話す人と向き合う(講義式)説明、連絡、安全の説明一方通行になりやすい
円班のミーティング、ふりかえり、ゲーム大人数では広がりすぎる
U 字実演して見せる説明、少人数の講習参加者どうしのつながりを育てるのには向かない

説明する人が太陽を背にすると、聞く側はまぶしくて表情が読めません。たき火の煙が参加者に向かないか、背後に気が散るもの(水辺、ほかのグループ)がないかも確かめます。

キャンプ場を選ぶ

団体の教育目的のキャンプでは、レジャー向けのキャンプ場とは違う条件が求められます。日本キャンプ協会の「優良・認定キャンプ場認定基準」は、立地、施設と設備、運営と管理などのグループに分けたチェック項目で、多くの項目に高いほうの基準と低いほうの基準の 2 段階を設けています[3]。数字の入った項目の例です。

項目基準
飲用水公の検査を受け合格している[3]
用水の量定員 1 名あたり 1 日 100 リットル以上を、年間を通じて(または渇水期を除いて)供給できる[3]
生活・活動の面積定員 1 名あたり 100 平方メートル以上、または 70 平方メートル以上[3]
洗面台・蛇口10 人あたり 1 基以上、または 15 人あたり 1 基以上[3]
便座洋式トイレを含み 10 人につき 1 便座以上、またはおおむね 15 人につき 1 便座以上(男子は便座の 1/3 を小便器にかえられる)[3]
調理の設備数人から 10 名程度のグループ単位で調理と給水ができる[3]

認定があるかどうかにかかわらず、下見では次の点を必ず確かめます(このサイトからの提案)。

  • 立地の安全:出水・地滑り・落石の危険。大雨のときの避難場所と避難経路(テントを張る場所の選び方)。
  • 雨のときの受け皿:定員全員が入って食事とプログラムができる、屋根のある施設。
  • 医療と連絡:最寄りの医療機関(昼と夜)、救急車が着くまでの時間、携帯電話の電波、管理者との連絡のしかた(実技8 下見とキャンプの危険)。

健康調査票と個人情報

健康調査票は、参加者の健康状態を前もって知り、キャンプ中の健康管理と緊急時の対応に生かすための書類です。起こりやすい症状(乗り物酔い、腹痛、夜尿など)、持病と服薬、アレルギー(食物・薬・虫など。症状と対応、エピペンの有無)、食べ物の好き嫌い、主催者に伝えたいことなどを書いてもらいます。使い方の流れは次のとおりです(このサイトからの提案)。

  • 事前:全員分を指導者が読み、配慮が必要な参加者を把握する。必要なら保護者に電話で詳しく聞く。
  • 出発の日:出発の数日前からの体調(睡眠、排便、体温、服薬)の記録を受け取り、当日の様子と照らす。
  • キャンプ中:担当のカウンセラーと看護の担当が情報を共有し、毎晩のミーティングで調査票とその日の様子を照らす。
  • 緊急時:救急隊や医療機関に持病・アレルギー・服薬を伝えられるよう、写しを救急用品と一緒に持ち歩く。

夜尿や持病などは、本人が知られたくない情報であることが多いものです。知るスタッフを必要最小限にし、本人が恥ずかしい思いをしないよう、さりげなく対応します(このサイトの考え)。

健康調査票には、病歴や健康診断の結果、診療を受けた事実など、個人情報保護法でいう「要配慮個人情報」が含まれることがあります[4]。個人情報保護委員会のガイドラインは、次のことを定めています[4]。

  • あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。
  • 申込書などの書面で本人から直接取得するときは、あらかじめ、本人に利用目的を明示しなければならない。
  • 利用する必要がなくなったときは、遅滞なく消去するよう努めなければならない。消去の方法の例として、焼却、溶解、適切なシュレッダー処理などの復元できない手段が挙げられている。

保管場所と見られるスタッフを決め、スマートフォンでの撮影やクラウドへの保存は団体のルールに従います。救護の記録は、事故の検証や保険の手続きに必要になることがあるので、保存期間を決めて保管します(このサイトからの提案)。記録の書き方は「第9章 キャンパーの観察と記録」へ。

考えてみよう

  1. あなたのキャンプで、カウンセラーとマネジメントスタッフを兼ねる人がいるとしたら、どんな場面で判断に迷いそうですか。
  2. 健康調査票の情報を、キャンプが終わった後どう扱うかを決めておきましょう。

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家族や仲間のキャンプでも、出発前に役割を決め、持病やアレルギーの情報を共有しておきます。

もしもの時は

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