ブッシュクラフトはどこでできるか|枝を拾う・直火・野営の決まりを、私有林・国有林・国立公園・河川敷で

ナイフ 1 本で木を削り、拾った枝で火を起こし、タープの下で夜を過ごす。ブッシュクラフトや「野営」の楽しさは、自然の中にあるもので工夫するところにあります。けれども、日本の山や森、川原には、どこにも持ち主と決まりがあります。枝を 1 本拾う、地面で火をたく、といった行為が、場所によっては法律で禁じられ、罰則もあります。

この記事では、法令(e-Gov 法令検索)と、林野庁・環境省・国土交通省・消防の資料から、場所ごとに「何をしてよいか」をまとめます。一般的な知識の整理で、法律の助言ではありません。自治体の条例や施設の決まりは場所ごとに違うので、行く先で必ず確かめてください。

まず早見表

場所泊まる・キャンプ枝や木を取る地面でたき火(直火)
他人の山林(私有林)持ち主の許可が要る許可なく取ると森林窃盗のおそれ持ち主の許可が要る。森林の近くでは軽犯罪法・条例にも注意
国有林レクリエーションの森などは、指定地以外のキャンプは禁止無断の採取は森林窃盗に問われることがある野営場などの指定場所を除き、行わない
国立・国定公園の特別保護地区決められた場所以外ではしない落ち葉・落ち枝の採取も許可が要る許可が要る
一般の河川敷原則として届出なくできる(禁止・制限された区域を除く)竹木の伐採は許可が要る直火は禁止・しないよう求める河川事務所が多い
都市公園国営公園は法令、自治体の公園は条例で決められる国営公園は禁止。自治体の条例でも禁止の例が多い国営公園は指定場所以外は禁止。自治体は条例による
キャンプ場施設の決まりによる施設の決まりによる施設の決まりによる

表の根拠は、下の節ごとに示します(表の組み立てはこのサイト)。

山の木や枝は、だれかの物

森林法は、森林でその産物を盗んだ人を「森林窃盗」とし、3 年以下の拘禁刑または 30 万円以下の罰金に処すと定めています(第 197 条)。保安林の区域内なら、5 年以下の拘禁刑または 50 万円以下の罰金です(第 198 条)。

林野庁の東北森林管理局は、国有林で産物(樹木、山菜を含む草本類、きのこ類、岩石や土砂など)を無断で採取すると、森林窃盗に問われることもあると注意しています。林野庁も、樹木を損傷したり、林産物を盗んだりした場合は、法により罰せられるとしています。

保安林では、都道府県知事の許可を受けなければ、立木を傷つけることや、下草・落ち葉・落ち枝を採取することなどができません(森林法第 34 条第 2 項。軽易な行為として省令で決められたものなどは除く)。

地面に落ちている枯れ枝を拾うことも、気軽にしてよいとは限りません。森は私有林でも国有林でも持ち主がいて、保安林や国立公園の一部では落ち枝の採取自体が許可制です。持ち主や管理者の許可がない場所では、枝も持ち帰らない・燃やさないのが確実です(このサイトの考え)。

国有林

東北森林管理局は、国有林に入る人に、原則として「入林届」の事前手続きを求めています(レクリエーションの森や野営場、登山道などの施設がある場所に、登山や森林浴などの目的で入る場合は不要)。林野庁は、たき火は野営場などの指定場所を除いて絶対に行わないよう求めています。レクリエーションの森では、指定地以外でのキャンプは禁止などのルールに従うよう案内しています。

また林野庁は、令和 7 年の大規模な林野火災を受けて、令和 8 年 1 月 1 日から、たき火や喫煙に関する規制が強化されたと知らせています(下の「火の決まり」)。

国立公園・国定公園

自然公園法は、国立公園・国定公園の特別保護地区で、環境大臣(国定公園は都道府県知事)の許可を受けなければしてはならない行為として、木竹を傷つけること、火入れやたき火、木竹以外の植物の採取や、落葉・落枝の採取などを挙げています(第 21 条第 3 項)。特別保護地区より規制のゆるい特別地域でも、木竹の伐採や工作物の新築などは許可が要ります(第 20 条第 3 項)。違反すると、1 年以下の拘禁刑または 100 万円以下の罰金です(第 82 条)。

環境省は尾瀬国立公園の利用上のマナーで、特別保護地区ではすべての動植物の採集が禁止されているほか、枯れ木を拾うことも法律で禁じられており、杖にするための枝を拾うこともできないと説明しています。国立公園全体についても、植生の破壊、野生動物の誘因、山火事を防ぐため、キャンプやたき火は決められた場所以外ではしないよう求めています。

河川敷

国土交通省の淀川河川事務所は、キャンプが禁止・制限されている河川公園などの区域を除く一般の河川敷では、河川の自由使用の原則にもとづいてキャンプはでき、届出や許可は要らないと回答しています。ただし、ごみの持ち帰りや、直火によるたき火の禁止などの火気のマナーを守るよう求めています。

江戸川河川事務所は、たき火は植生の支障になり野火の原因にもなるので、直火では禁止しているとしています。利根川下流河川事務所は、河川敷の枯れ草に延焼して火災になる事故が起きていること、たき火の熱で護岸などの施設も傷むことから、河川敷でたき火をしないよう求めています。河川区域内で竹木を伐採するには河川管理者の許可が要ります(河川法第 27 条)。

河川敷は、上流の雨で急に増水する場所でもあります。泊まるかどうかは、法律より先に安全で判断します。詳しくは「テントを張る場所の選び方」と「川遊びの水難を防ぐ」へ。

都市公園

国が設置する都市公園(国営公園)では、竹木の伐採や植物の採取が禁じられ(都市公園法第 11 条)、公園管理者が指定した場所以外でたき火をすることも禁止行為に挙げられています(都市公園法施行令第 18 条)。自治体の都市公園は、それぞれの都市公園条例で決められています。たとえば札幌市の条例は、竹木の伐採や植物の採取を禁止し、公園の管理上特に必要なとき(火気の使用など)に市長が禁止できるとしています。

火の決まり

  • 軽犯罪法:相当の注意をしないで、建物や森林など燃えるような物の近くで火をたいた人は、拘留または科料の対象です(第 1 条第 9 号)。
  • 林野火災警報・注意報:東京消防庁によると、東京都での発令の対象期間は 1 月 1 日から 5 月 31 日までで、林野火災警報が出ている間は、キャンプや登山で対象区域の林野に入る人も、火の使用が制限されます。警報のときの火の使用の制限に違反すると、30 万円以下の罰金または拘留に処すると消防法で定められています。しくみは「たき火と山火事」へ。
  • 届出:東京消防庁は、火災と見間違えるような煙や火が出る行為をするときは、その 3 日前までに管轄の消防署への届出が必要だとしています。届出をしても、警報などによる火の使用の制限は免除されません。届出の要否と期限は市町村の火災予防条例で違うので、行く先の消防に確かめます。
  • 野焼きの禁止:廃棄物処理法は、決められた方法による場合を除き、廃棄物の焼却を禁じています(第 16 条の 2)。例外の 1 つが「たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの」です(施行令第 14 条)。ただし環境省は、生活環境の保全上著しい支障を生ずる焼却はこれに含まれないとしています。ごみを燃やして片付けるのはやめましょう(このサイトからの提案)。
  • 火入れ:森林や森林の近くでの「火入れ」には市町村長の許可が要ります(森林法第 21 条)。消防庁と林野庁の資料では、火入れは立木竹や草などを面的に焼く行為で、たき火とは異なるとされています。

刃物と立ち入り

  • 刃物:刃体の長さが 6 cm を超える刃物は、正当な理由がなければ持ち歩けません(銃刀法)。軽犯罪法は、正当な理由なく刃物などを隠して持ち歩くことも対象にしています(第 1 条第 2 号)。詳しくは「キャンプの刃物と法律」へ。
  • 立ち入り:入ることを禁じた場所や他人の田畑に正当な理由なく入ることは、軽犯罪法の対象です(第 1 条第 32 号)。

ブッシュクラフトを楽しむために(このサイトからの提案)

  1. まずは、決まりのはっきりした場所で:直火や枝の利用を認めている、と明記したキャンプ場や野営場を選び、何が許されているか(直火、地面の枝を燃やす、生木を切る、ナイフワーク)を予約の前に確かめます。
  2. 私有林は、持ち主に頼む:知り合いの山林や、体験を受け入れている森で、何をしてよいかを先に決めておきます。
  3. 薪と焚付けは持っていく:「その場の物を使う」技術は、施設が認める範囲で練習します。たき火台を使えば、地面を焦がさず、後始末も確実になります。
  4. 出かける日に、警報と条例を見る:林野火災注意報・警報と、行く先の市町村の決まりを確かめます。
  5. 痕跡を残さない:灰は施設の決まりに従って処理し、穴を掘った場所は埋め戻します。

火の起こし方は「火起こしの基本」、ロープワークは「ロープの基本の結び方」、山のトイレの作法は「山と野外のトイレ」にまとめています。

英語版には、米国の国有林・国立公園・土地管理局の土地で、枝の採取やたき火、シェルターづくりがどう決められているかをまとめた記事があります:Bushcraft on U.S. public land: what the rules say。

ふだんは

ブッシュクラフトは、直火や枝の利用をはっきり認めているキャンプ場で始め、薪と焚付けは持っていきましょう。

もしもの時は

災害のときも、他人の土地の木を勝手に切ったり燃やしたりはできません。避難先での火の扱いは、管理者の指示に従います。

出典と調べた日

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