雪崩から身を守る|斜面は30度以上、表層雪崩は前ぶれなし、埋まった人は10分以内に掘り出す(気象庁・日本雪崩ネットワーク)
雪崩は、山スキーや冬山登山の人だけの危険ではありません。国土交通省によると、集落を対象とした雪崩の危険箇所(人家 5 戸以上など)は全国に 20,501 箇所あります(平成 16 年度の公表)。この記事では、気象庁(新潟地方気象台)・国土交通省・防災科学技術研究所・警察と、雪崩の安全を専門にする非営利団体の日本雪崩ネットワークの資料から、雪崩の種類、起きやすい場所、スキー場の外へ出るときの備え、巻き込まれた人を助ける手順、雪解けの季節の注意をまとめます。
雪崩の 2 つの種類
防災科学技術研究所によると、斜面の積雪は、重力で斜面を下ろうとする力と、それを支える力が釣り合っています。下ろうとする力が支える力より強くなると雪崩が起き、地面の上で滑ると全層雪崩、雪の内部で滑ると表層雪崩になります。
| 表層雪崩 | 全層雪崩 | |
|---|---|---|
| 多い時期 | 多くは冬(厳冬期) | 厳冬期にも起きるが、多くは春 |
| 時間帯 | 日中・夜間に関係なく起きる | 夜間より、気温が上がる日中に起きやすい |
| 前ぶれ | 前兆が見られない | 雪の表面にひび割れやコブ状の盛り上がりが出る |
| 速さ | 時速 100〜200km に達することもある | 時速 40〜80km と言われる |
出典は新潟地方気象台の解説です。気象台は、雪崩はスピードが速く、起きたことに気づいても逃げることは不可能だとしています。表層雪崩は前兆がなく、事前に予測することが非常に難しい雪崩です。前ぶれが見えないことは、安全の証拠になりません。
起きやすい場所と条件
- 傾斜:一般に 30 度以上で起きやすくなり、35〜45 度が最も危険と言われています(新潟地方気象台)。
- 木の少ない斜面:木が生えていない斜面、背の低い木だけの斜面、笹や草しか生えていない斜面(新潟地方気象台)。
- 平らに積もった斜面:もとの地形が分からないほど平らに雪が積もっている斜面は、表層雪崩の危険があります(国土交通省)。
- 雪の積もり方:短時間のまとまった降雪、強風で飛ばされた雪が大量にたまること、積雪の上に人の体重などがかかることで、下ろうとする力が増えます。雪解けや雨、雪の中に弱い層ができることで、支える力が減ります(防災科学技術研究所)。
内閣府は、雪崩の危険箇所とされていない場所でも、多量の積雪があれば雪崩の危険が高くなると注意しています。
雪崩の前ぶれ
国土交通省は、次のような様子を雪崩の前ぶれとして挙げています。見かけたら、その斜面の下に近づかないようにします(このサイトからの提案)。
- クラック:雪の割れ目。積もった雪がゆるみ、少しずつ動き出そうとしている状態です。
- 雪しわ:積雪が少なくても、全層雪崩が起きる危険があります。
- スノーボール:斜面をボールのような雪のかたまりが転がり落ちてくる現象。雪庇などの一部が落ちてきたものです。
- 雪庇(せっぴ):山の尾根から雪が張り出している現象。張り出した部分が斜面に落ちると、雪崩につながる危険があります。
なだれ注意報
気象台は、雪崩による災害が起きるおそれがあるときに「なだれ注意報」を発表します。基準は地域ごとに違います。たとえば福島地方気象台の基準の一つは「山沿いで、24 時間降雪の深さが 40cm 以上」です。長野県大鹿村の基準では、表層なだれと全層なだれで別の条件が決められています。なお、気象庁が警戒レベルに対応させている気象警報・注意報は、河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮の 4 つで、なだれ注意報は含まれていません(警戒レベルは「警戒レベルと避難情報」へ)。
スキー場の外へ出るなら
日本雪崩ネットワークは、スキー場とバックカントリー(管理されていない山の斜面)は「まったく別の世界」だとしています。スキー場内の雪崩死亡事故は、ほとんどすべてが立入禁止区域か、一時的な閉鎖区域で起きています。気象台も、スキー場の立入禁止区域は安全が保証されない自然の斜面で、立ち入るのは大変危険だとしています。
警察庁は、バックカントリースキーには冬山登山と同じ知識・技能・装備が必要で、安易な行動は厳に慎むよう呼びかけています。天候や積雪の状況、滑るコースや地形を確かめ、登山計画書(登山届)を出し、必要な装備を持つことを求めています。北海道警察によると、北海道の冬山シーズン(11〜3 月)の遭難の約 8 割はバックカントリースキーの遭難で、過去 5 シーズンの雪崩による遭難 14 件のうち 9 件が 3 月に起きていました。
- 雪崩ビーコン・プローブ・ショベルを、全員が 1 人ずつ持つ:ビーコンは埋まった人を探す、プローブは埋まった位置を確かめる、ショベルは素早く掘り出すための道具です。日本雪崩ネットワークは、各メンバーが自分で持っていないと意味がないとし、同時に、これらは生還を保証しないとも注意しています。
- 雪崩が起きうる斜面に入るのは 1 人ずつ(日本雪崩ネットワーク)。
- 地域のルールに従う:たとえば北海道のニセコでは、地元の協議会(事務局はニセコ町役場)が「ニセコルール」を定めています。スキー場の外へは必ずゲートから出る、ロープをくぐらない、ゲートが閉じているときはスキー場の外に出ない、立入禁止区域には絶対に入らない、などです。スキー場の外での救助捜索には、費用(最低 10 万円)が請求されます。
山での遭難全体の備えは「山岳遭難の現状と登山計画書」へ。
巻き込まれた人を助ける
日本雪崩ネットワークは、目標はできるだけ早く、遅くとも 10 分以内に埋まった人の呼吸を確保することだとしています。これを過ぎると生還の可能性は急に下がります(一方で、1 時間近く埋まっていて生還した例もあります)。救助隊の到着を待っていては間に合わないため、まずその場にいる人で捜索と掘り出しを始めます。警察への通報は初動が落ち着いてからで構わず、対処が難しいと感じたら速やかに 110 番へ通報します。
雪解けの季節
内閣府は、雪解けの季節を前に、気温の上昇による雪崩と落雪、雪解け水による河川の氾濫や土砂災害への備えを呼びかけています。新潟地方気象台によると、雪解けの時期には毎日数十 mm の雨に相当する雪解け水が地面に流れ出し、最盛期には日雨量 50mm に相当することも珍しくありません。晴れていても、毎日雨が降り続いているのと同じです。新潟県では、地すべりの発生件数の半数近くが 3〜5 月の雪解けの時期に集中しています。
気象台は、雪解けで災害のおそれがあるときに「融雪注意報」を発表します。崖や斜面の変化に気づいたら「土砂災害の前ぶれと避難」、屋根からの落雪は「屋根からの落雪・つららに注意」へ。
雪国で暮らす・通うなら(このサイトからの提案)
- 国土交通省は、雪崩の危険箇所の詳細は住んでいる自治体のホームページで調べるか、自治体に問い合わせるよう案内しています。自宅や通勤路、よく使う道路が入っていないか確かめておきます。
- 大雪や急に暖かくなった日、雨の日は、斜面の下の道や沢沿いを避けます。
- 山スキーを始めるなら、道具をそろえる前に講習を受けます。日本雪崩ネットワークは、一般向けの講習を開いています。
英語版の記事は「Avalanche safety for backcountry skiing in Japan」です。
ふだんは
自宅や通勤路が雪崩の危険箇所に入っていないか、自治体のホームページで確かめておきましょう。
もしもの時は
斜面にひび割れや雪しわ、転がる雪の玉が見えたら、その斜面の下から離れます。巻き込まれた人がいたら、その場の全員ですぐに捜索を始めます。
出典と調べた日
- 新潟地方気象台「新潟県の雪災害」(なだれ・融雪) (2026-11-06 に確認)
- 国土交通省「雪崩防災」 (2026-11-06 に確認)
- 防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター「雪崩発生のメカニズム」 (2026-11-06 に確認)
- 気象庁「気象警報・注意報」 (2026-11-06 に確認)
- 福島地方気象台「気象警報・注意報の発表基準」 (2026-11-06 に確認)
- 長野地方気象台「警報・注意報発表基準一覧表」大鹿村(PDF) (2026-11-06 に確認)
- 警察庁「令和7年における山岳遭難の概況等」(PDF) (2026-11-06 に確認)
- 北海道警察「冬山シーズンにおける山岳遭難発生状況」(PDF) (2026-11-06 に確認)
- 日本雪崩ネットワーク「7 STEPS」STEP1 (2026-11-06 に確認)
- 日本雪崩ネットワーク「7 STEPS」STEP2 (2026-11-06 に確認)
- 日本雪崩ネットワーク「7 STEPS」STEP7 (2026-11-06 に確認)
- 日本雪崩ネットワーク「雪崩基礎知識」Unit 7 (2026-11-06 に確認)
- 日本雪崩ネットワーク「ロープの向こう側」 (2026-11-06 に確認)
- ニセコ全山「ニセコルール」(日本語版) (2026-11-06 に確認)
- ニセコ町「ニセコルール」 (2026-11-06 に確認)
- 内閣府「融雪出水期における防災態勢の強化について」(令和8年3月・PDF) (2026-11-06 に確認)