山で道に迷ったら|引き返す・沢を下らない・早めに救助要請、位置の伝え方と合図

山の遭難でいちばん多いのは、滑落でも転倒でもなく道迷いです。警察庁によると、令和 7 年の山岳遭難者 3,623 人を態様別に見ると、道迷いが 30.9% で最も多く、転倒 19.2%、滑落 17.3% が続きました。一方で、発生件数 3,122 件の 76.3% では、遭難の現場から携帯電話や無線機で救助を要請しています。

道に迷うこと自体は、だれにでも起こります。大切なのは、迷ったと気づいたあとの動き方です。この記事では、警察と山岳団体の資料から、その順番をまとめます。

1. 「たぶん合っている」で進まない

福島県警は、「たぶんこっちで合ってるはずだ」「もう少し行って、分からなければ引き返そう」は禁物で、戻れるうちに分かる場所まで引き返すことが大切だとしています。道迷いは、迷ったと気づく前の「少しだけ先へ」で深くなります。

道標が見当たらない、踏み跡が薄くなった、予定の時間を過ぎても目印に着かない。こうした小さな違和感が、立ち止まる合図です(このサイトの考え)。

2. 止まって、位置を確かめる

福島県警は、地図やコンパス、GPS で自分の位置を確認することが最優先で、むやみに動き回ると体力を消耗するばかりでなく、危険な場所に迷い込むおそれがあるとしています。

警察庁は、登山地図アプリと紙の地図を併用すると、より正確に位置を把握でき、道迷いの防止につながるとしています。地図とコンパスの使い方は「地図とコンパスの基本」にまとめています。

3. 元の道へ戻る。戻れなければ上へ。沢は下らない

日本山岳会は、記憶をたどって周囲を確かめながら、道標や分岐など、はっきり分かる元の道に戻るよう呼びかけています。それができなければ、上の方向に向かって無理のない行動で尾根に出ること、そして絶対に沢や谷に下らないことを求めています。沢や谷を下ると、降りられない滝や岩場に出くわす可能性が非常に高いからです。

福島県警も、やみくもに山を降りると、さらに自分の位置を見失う可能性が大きく、崖や滝に行き当たって降りることも戻ることもできなくなることがあるとしています。山では、尾根やピークのほうが位置を確かめやすいとも書いています。

下りたくなるのは、ふもとの町や車が下にあるからです。けれども、山の谷は下るほど狭く、険しくなることが多く、上からは見えなかった滝で行き止まりになります(このサイトの考え)。

4. 早めに救助を要請する

福島県警は、むやみに動き回ることは捜索範囲を広げるだけなので、早め、早めの救助要請を検討するよう呼びかけています。通報は 110 番か 119 番、無線での救助要請です。

伝えること(福島県警)

  • 場所。たとえば緯度・経度、「○○山頂から○○方面に約○キロの登山道上」など
  • 位置がまったく分からないときは、その日の行動予定と、最後に現在地を確かめた場所、周りの地形や見えている物

GPS 機能の付いた携帯電話を持っている人は、緯度・経度を確かめる方法を覚えておくようにと、福島県警は書いています。地図アプリで現在地の緯度・経度を表示する手順を、山に行く前に一度試しておきましょう(このサイトからの提案)。

携帯電話の位置情報は自動で送られるが、口でも伝える

総務省によると、携帯電話から 110 番・119 番などの緊急通報をすると、GPS が使える端末では GPS の位置情報が、それ以外では基地局の場所などから計算した位置情報が、受け付けた側に送られます。精度は、GPS なら電波状況がよければ数十メートル以下、基地局による位置情報なら数百メートルから 10 キロメートル程度です。総務省は、GPS の受信状況や電波状況によっては正確な位置を通知できない可能性もあるので、口頭でも現在地や目標物を伝えるよう求めています。

横須賀市は、GPS 機能を有効にしていないと、緊急通報のときに位置情報が伝わらず、場所の特定に時間がかかる場合があると注意しています。なお、番号の頭に 184 を付けて発信すると、電話番号や位置情報は通知されません(総務省)。

通報したあとは電池を残す

福島県警は、救助を要請したあとは他の通話を控えて電池を節約し、折り返しの電話に出られる状態を保つよう求めています。警察庁も、GPS 機能付きの携帯電話は救助要請の手段として有効である一方、多くの山では通話できる範囲が限られ、電池の残りに注意が必要だとしています。

5. 見つけてもらう

福島県警が挙げる、救助のヘリコプターや捜索隊への合図です。

  • レスキューシート、目立つ色のウェア、ツェルトなどを頭上で大きく振る
  • 鏡で日光を反射させる
  • 捜索隊の呼びかけには、笛などで応える
  • 暗いときや霧が出ているときは、ヘッドランプなどのライトも有効

福島県警は、遭難信号として「10 秒に 1 回の信号を 6 回発信したあと、1 分間休む」を繰り返す方法を紹介しています。昼間は音(笛)、夜間は光を使います。大声を出し続けるより体力を使いません(このサイトの考え)。英語版で紹介している米国の国立公園局(NPS)の案内は笛を 3 回吹いて休み、また 3 回吹く、という数え方で、福島県警の方法とは違います。どちらも、繰り返して人に気づいてもらうための合図です。

6. 動かずに夜を越す準備

救助を待つあいだや、日が暮れて動けなくなったときは、体温を保つことが命を守ります。警察庁は、遭難に備える装備の例として、ツェルト(簡易テント)、地図(登山地図アプリを含む)、コンパス、行動食などを挙げています。風を避けられる場所で、地面に座る物を敷き、ツェルトや雨具をかぶって、乾いた服を重ねます(このサイトからの提案)。寒さへの備え方は「寒くない寝床のつくり方」も参考になります。

迷わないための準備

  • 登山計画書:行き先と下山予定を家族と警察に知らせておくと、帰らないときに捜索がすぐ始まります。詳しくは「山岳遭難の現状と登山計画書」。
  • 途中から下りられる道:警察庁は、トラブルのときに途中から下山できるルート(エスケープルート)を事前に把握しておくよう求めています。
  • 地図は 2 種類:スマートフォンの地図と紙の地図。予備の電池も(このサイトからの提案)。
  • 引き返す時刻を決めておく:その時刻になったら、目的地の手前でも引き返す(このサイトからの提案)。

持ち物は「日帰りの登山でも持つもの」にまとめています。英語版には、携帯電話・衛星メッセンジャー・PLB(個人用の遭難信号発信機)で見つけてもらう方法を比べた記事があります:Getting found: phones, satellite messengers and personal locator beacons。

ふだんは

山に行く前に、地図アプリで現在地の緯度・経度を表示する方法を一度試しておきましょう。

もしもの時は

災害で知らない場所にいて道が分からなくなったときも、むやみに動かず、通報では口でも場所と目印を伝える、という順番は同じです。

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