低体温症と凍傷|搬送された人の8割近くは屋内で発症、震えが止まったら危険、凍傷はこすらず約40℃で(日本救急医学会・消防庁)
寒さで亡くなる人は、暑さで亡くなる人より多いことがあります。気象学会誌『天気』の論文によると、日本で低温によって亡くなった人は 2008〜2017 年の 10 年間で 11,002 人で、熱中症の 8,041 人を上回りました。同じ論文が紹介する日本救急医学会の調査では、2010 年 12 月〜2011 年 2 月に低体温症で救急搬送された 418 人の8 割近くが、屋内で低体温症を起こしていました。低体温症は、雪山だけの病気ではありません。この記事では、日本救急医学会・消防庁・厚生労働省・北海道医師会・日本創傷外科学会の資料から、低体温症と凍傷の見分け方と手当てをまとめます。
低体温症とは
日本救急医学会によると、低体温症は体の内部の温度(深部体温)が 35℃以下に下がった状態です。
| 段階 | 深部体温 | 体の様子(日本救急医学会) |
|---|---|---|
| 軽度 | 35〜32℃ | 筋肉が震える |
| 中等度 | 32〜28℃ | 震えが消える |
| 高度 | 28℃以下 | 筋肉が硬くなる |
震えが止まったのは、良くなったからではありません。厚生労働省は、震えていた人が暖まらないまま震えなくなってきたり、意識がもうろうとしてきたりしたら、急いで医療機関を受診するよう促すとしています。体温が 30℃以下になると心臓が不整脈を起こしやすくなるため、日本救急医学会は、患者をやさしく扱う配慮が必要だとしています。
体の熱が奪われる道
消防庁によると、冷たい地面に触れる、水に濡れたり浸かったりする、風に当たることなどで体の熱は失われます。濡れた服は、乾くときに熱を奪います。屋内でも、暖房のない部屋で薄着のまま長く過ごすと体温は下がります(このサイトの考え)。
低体温症の手当て
- 119 番に通報する。
- 暖かい場所へ移す。動かすときは、やさしく扱います。
- 濡れた服を脱がせ、乾いた服に着替えるか、毛布でくるむ(北海道医師会)。地面や床に寝かせるときは、毛布を体の下にも敷きます(消防庁)。
- これ以上冷やさない:消防庁は、保温とは人工的に熱を加えることではなく、体の表面から熱が逃げるのを防いで、本人の体温を保つことだと説明しています。
- 軽いうちなら、温かい飲み物を飲ませるのも効果的です(北海道医師会)。
英国の国民保健サービス(NHS)は、熱い風呂や湯たんぽ、ヒーターのランプで急に温めない、腕や脚、手足をこすらない、お酒を飲ませない、としています。
凍傷の手当て
- こすらない、もまない(消防庁・北海道医師会)。こすると組織をさらに傷めます。
- 約 40℃のぬるま湯で温める:北海道医師会は 40℃くらいのぬるま湯で 10〜30 分かけて完全に解かす(中途半端に解かさない)、日本創傷外科学会は約 40℃の温水で、解けるまで 30 分程度温めるとしています。
- また凍るおそれがあるなら、温めずに運ぶ:一度解けかけた部分が再び凍ると、傷がさらに大きくなります(北海道医師会)。
- 低体温症もあるときは、低体温症を先に:日本創傷外科学会は、体温が 35℃以下の低体温症のときに手足から先に温めると、低体温を悪くする場合があるとしています。
家の中の寒さ
国土交通省の調査では、冬の住宅の平均室温は、在宅中の居間が 16.7℃、就寝中の寝室が 12.6℃、在宅中の脱衣所が 12.8℃でした。脱衣所や浴室の寒さは、冬の入浴事故にもつながります(「冬の入浴事故(ヒートショック)を防ぐ」へ)。
予防のために(このサイトからの提案)
- 一人暮らしの高齢の家族には、寒い日に電話をかける。暖房を我慢していないか聞く。
- 寝室を暖め、首・手首・足首を覆う。重ね着は、汗をかいたら脱ぐ。
- 冬の屋外では、濡れたら早めに着替える。風を防ぐ上着を持つ。
- 停電や冬の災害への備えは「冬の地震・停電と寒さに備える」へ。
英語版の記事は「Hypothermia and frostbite: warning signs and first aid」です。
ふだんは
一人暮らしの高齢の家族が、寒い日に暖房を我慢していないか、電話で聞いてみましょう。
もしもの時は
震えていた人が暖まらないまま震えなくなったら、すぐ119番へ。濡れた服を脱がせ、毛布でくるみ、体の下にも毛布を敷きます。
出典と調べた日
- 日本救急医学会「医学用語解説集 偶発性低体温症」 (2026-11-06 に確認)
- 消防庁「応急手当WEB講習」低体温症 (2026-11-06 に確認)
- 消防庁「応急手当WEB講習」保温 (2026-11-06 に確認)
- 消防庁「応急手当WEB講習」凍傷 (2026-11-06 に確認)
- 厚生労働省「避難所生活を過ごされる方々の健康管理に関するガイドライン」(PDF) (2026-11-06 に確認)
- 北海道医師会「応急手当Web」低体温症・凍傷 (2026-11-06 に確認)
- 日本創傷外科学会「凍傷」 (2026-11-06 に確認)
- 藤部文昭ほか『天気』66巻8号(2019年・PDF) (2026-11-06 に確認)
- 国土交通省 審議会資料(スマートウェルネス住宅等推進調査・PDF) (2026-11-06 に確認)
- NHS「Hypothermia」(英語) (2026-11-06 に確認)