冬の地震・停電と寒さに備える|能登では直接死の1割強が低体温症・凍死、冬の深夜が最悪の想定(内閣府)

2024 年 1 月 1 日の能登半島地震は、真冬の災害でした。令和 7 年版の防災白書によると、警察が取り扱った直接死の死因は、約 4 割が圧死、約 2 割が窒息・呼吸不全で、寒さが影響して亡くなった「低体温症・凍死」が 1 割強でした。その後、避難生活の中で亡くなる「災害関連死」が増え、令和 7 年 5 月 13 日の時点で死者・行方不明者 594 人のうち 364 人が災害関連死になっています。この記事では、内閣府・自治体・厚生労働省の資料から、冬に地震や停電が起きたときの寒さへの備えをまとめます。

冬の深夜がいちばん厳しい

内閣府は、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の被害を、季節と時間帯ごとに想定しています。最も被害が大きくなるのは冬の深夜です。多くの人が自宅で寝ていて避難の準備に時間がかかるうえ、夜の暗さと積雪・凍結で避難の速さが落ちるためです。

  • 日本海溝モデルの冬・深夜の想定では、死者は最大約 19 万 9 千人、津波から避難したあとに体温が下がり、手当てが必要になる人(低体温症要対処者)は約 4 万 2 千人です。
  • 千島海溝モデルでは、死者は最大約 10 万人、低体温症要対処者は約 2 万 2 千人です。
  • 一方で、早く避難する人を増やし、津波避難ビルやタワーなどを使えば、死者は日本海溝モデルで約 19 万 9 千人から約 3 万人に、千島海溝モデルで約 10 万人から約 1 万 9 千人に減ると見込まれています。

冬の夕方は火を使う人が最も多い時間帯で、地震による出火と延焼の被害も想定されています。津波からの避難は「津波警報・注意報と避難」へ。

停電で暖房が止まる

札幌市は、冬に地震が起きて停電で暖房が使えなくなると家の中は急速に冷え、室内にいても低体温症の危険が高まるので、体温を保つことが命を守る最優先の対策だとしています。2018 年 9 月の北海道胆振東部地震では、道内全域で最大約 295 万戸が停電し、ほぼ全域に電気が戻るまで 45 時間程度かかりました(内閣府)。これが真冬だったらどうなるか、を考えて備えます。

  • 北海道は、避難所へ避難する場合は、防寒着を含めて最低 1 泊分の冬の装備が必要だとしています。自宅にとどまる場合も、被災直後は停電する可能性が高いので、電池式の暖房器具やカセットコンロがあると安心だとしています。
  • FF 式など電気を使う暖房は、停電すると止まります。電気を使わない暖房器具を使うときは、一酸化炭素中毒と火事に注意します(「ストーブ・暖房器具の火災を防ぐ」「テントや車の中で火を使わない」へ)。

停電全般の備えは「停電への備え」へ。

避難所の寒さ

内閣府の指針は、避難所の規模や設備に応じて冷暖房を整え、備蓄を進めること、そのとき電源の確保に加えて換気と乾燥への対策も考えることを求めています。寝床については、初めは毛布や通気の確保で寒さをやわらげ、マットや段ボール、エアーベッドを含む簡易ベッドを、避難所を開くときから置けるようにするよう求めています。

能登半島地震では、ストーブ、ジェットヒーター、カイロなどの暖房器具が国から送られましたが、報告書は真冬の災害に備えた暖房設備の備蓄が課題だとしています。石油ストーブは広い空間を暖めるのが難しく、換気が必要だという短所もあります。体育館の床は冷えます。床に直接寝ないことが、寒さから身を守る第一歩です(このサイトの考え)。

冬の避難所の感染症

厚生労働省の感染症の専門家のコラムによると、災害の後は、発生から 72 時間〜1 週間ごろから 1 か月ごろにかけて呼吸器の感染症が、やや遅れて胃腸の感染症が少しずつ増えてきます。冬に多いノロウイルスについて、厚生労働省は次のように説明しています。

  • 手洗いは、手に付いたノロウイルスを減らす最も有効な方法です。消毒用エタノールでの手の消毒は、石けんと流水での手洗いの代わりにはなりません。
  • 吐いた物やふん便は、乾くと空気中に舞い上がって口に入ることがあるので、乾かないうちに手袋やマスクを着けて処理し、十分に換気します。
  • 拭き取ったあとの床は、塩素濃度約 200ppm の次亜塩素酸ナトリウムで浸すように拭き、そのあと水拭きします。拭き取りに使った物を捨てる袋には、塩素濃度約 1,000ppm の液を入れることが望ましいとしています。

政府広報は、燃焼した排ガスを屋内に出す開放式のガス・石油暖房器具を使うときは、1 時間に 1〜2 回、窓を開けて換気するよう呼びかけています。

寒さで亡くなる「災害関連死」

内閣府の災害関連死の事例集には、停電で暖房器具が使えないという過酷な状況で心不全を起こして亡くなった例など、寒さが関係した事例が載っています。高齢の家族や持病のある家族は、早めに暖かい場所へ移れるよう、親戚の家やホテルなど避難先の選択肢を考えておきます(このサイトからの提案)。

冬のための備え(このサイトからの提案)

  • 非常持ち出し袋に、防寒着、帽子、手袋、厚手の靴下、カイロ、アルミの保温シートを足す。
  • 家の備蓄に、カセットコンロとボンベ、電気を使わない暖房器具、寝袋か毛布を家族の人数分。
  • 寝室の家具を固定し、枕元にスリッパ、懐中電灯、上着を置く(冬の深夜に揺れたとき、すぐ外へ出られるように)。
  • 避難所へ行くなら、床に敷くマットや段ボールも持っていく。寝袋の使い方は「寒くない寝床のつくり方」へ。

体が冷えたときの手当ては「低体温症と凍傷」へ。

ふだんは

非常持ち出し袋に、防寒着・帽子・手袋・カイロを足しておきましょう。電気を使わない暖房器具があるか確かめます。

もしもの時は

冬に停電したら、まず体温を保つことを最優先にします。重ね着をし、床に直接座らず、家族で一つの部屋に集まります。

出典と調べた日

誤りを見つけたら、お問い合わせの種類「記事の誤りの連絡」でお知らせください。確かめて直し、更新履歴に記録します。